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2026.04.04
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ヒアルロン酸注入が顔の組織に与える効果——そのメカニズムと科学的根拠をわかりやすく解説

【はじめに】
ヒアルロン酸を注入する美容医療は、近年急速に普及しています。米国皮膚外科学会(ASDS)の報告によれば、ヒアルロン酸を含む「フィラー(組織の充填剤)」の注入は、ボトックス注射に次いで世界で最も多く行われている美容施術であり、その需要は年々拡大しています。
一方で、「なぜ膨らむのか」「なぜ効果が持続するのか」「体の中で何が起きているのか」といった根本的な疑問に答える情報は、日本ではまだ十分に広まっているとは言えません。今回は、ヒアルロン酸の性質・製剤の特徴・注入後に体内で起きる変化について、できるだけわかりやすく解説します。


【ヒアルロン酸とはそもそも何か】
ヒアルロン酸は、もともと人間の体内に存在する天然の物質です。関節・眼球・皮膚など全身に広く分布しており、組織の潤いやクッション性を保つ役割を担っています。
その最大の特徴は水を引き寄せる力の強さです。ヒアルロン酸1gは、最大6リットルもの水分を保持できることが知られています(Laurent & Fraser, 1992)この性質が皮膚のハリや弾力の維持に直結しています。
さらに近年の研究では、ヒアルロン酸が皮膚の細胞に直接働きかけ、コラーゲンの産生を促すことも明らかになっています(Stern et al., 2006; Kavasi et al., 2017)つまりヒアルロン酸は「膨らませる充填剤」であるだけでなく、「皮膚そのものを活性化する物質」でもあるのです。


【注射用のヒアルロン酸は「加工品」】
体内にもともと自然に存在するヒアルロン酸は、そのままでは注入材料として使えません。体内の酵素によって24〜48時間ほどで分解されてしまうからです。そこで美容医療に使われる製剤では、ヒアルロン酸の分子同士を化学的に連結させる「架橋(かきょう)」という加工が施されています。架橋とは、バラバラの鎖をところどころ結びつけてネット状にするようなイメージです。この処理によって、酵素によって分解されにくくなり、体内での効果持続期間が数ヶ月〜数年単位へと延長させているのです。


【製剤の「硬さ」が仕上がりを左右する】
ヒアルロン酸製剤にはさまざまな種類があり、その「硬さ」や「流動性」が注入する部位によって使い分けられています。この特性を専門的にはレオロジー(流動学)特性と呼びます。わかりやすく言えば、硬い製剤は形を維持する力が強く、輪郭を整えたり、靭帯の弛みを矯正しリフトアップに用いるような用途に向いています。一方、柔らかい製剤は動きに追従しやすく、よく動く部位や皮膚の薄い部位に適しています(Sundaram & Cassuto, 2013)
当然、当院も注入部位によって硬さや流動性の違うヒアルロン酸を使い分けています。「いろいろな種類があるので、何を選んでいいのかわからない」という方でも、目的やご予算からカウンセリングで最善のヒアルロン酸をご提案させていただきますのでご安心ください。


【ヒアルロン酸注入後、体の中で起きていること】
ヒアルロン酸を注入した後、体内では単なる「膨らみ」以上の変化が起きています。Goldberg et al.(2006)の研究では、注入後の組織を詳しく調べた結果、以下の3つの反応が確認されています。

1. 異物に対する拒絶反応がほとんど起きない
架橋ヒアルロン酸は体との相性が非常に良く、免疫細胞による過剰な拒絶反応がほとんど生じません。

2. コラーゲンの産生が促進される
注入部位の周囲に「線維芽細胞(コラーゲンを作る細胞)」が集まり、皮膚の土台となるⅠ型・Ⅲ型コラーゲンが新たに作られる反応が促進されます。

3. 血流が改善される
血管を新たに作る働きを持つ成長因子(VEGF)の量が増加し、注入部位の組織に栄養が届きやすくなります。

特に注目すべきは2. です。ヒアルロン酸が体内で分解・消失した後も、新しく作られたコラーゲンが残ることで、皮膚の質そのものが一定期間改善されることが示されています。「注入した物がなくなったら元に戻る」だけではなく、皮膚への積極的な働きかけがある点が、ヒアルロン酸注入の重要な特徴の一つです。


【効果はどのくらい持続するか】
持続期間は製剤の種類・注入部位・個人の体質によって異なります。
口唇部は動きが多く代謝も活発なため、6〜12ヶ月程度が目安です。涙袋など動きの少ない部位では、9〜18ヶ月程度持続するという報告が多くみられます(Beasley et al., 2009)。
また、喫煙・紫外線・代謝の個人差によっても分解速度は変わります。同じ施術でも持続期間に個人差が出るのはこのためです。
さらに効果の持続期間というのは「いつまでヒアルロン酸がその場所に止まっているのか」のみで測られるものではなく「注入してからいつまでのあいだ、形に満足していたか」という主観的満足度も重要な指標です。主観的要素が絡んでくる以上、効果がどれくらい持続するかという問いに関して、なかなかズバリとお答えできないのが歯痒いところです。
しかし、製剤によってある程度の持続期間の目安はありますので、カウンセリングの際はそちらも含めてご案内しています。


【おわりに】
ヒアルロン酸注入は、体内の自然な物質を応用した科学的根拠のある医療技術です。製剤の進歩によって安全性・精度ともに日進月歩の向上を見せ、適切な製剤選択と医師の技術があれば、自然で持続性の高い結果が期待できます。
一方で、注入する部位の解剖学的な知識や製剤特性の理解が、仕上がりと安全性を大きく左右することも事実です。施術を検討される際は、こうした知識を持つ医師のいるクリニックを選ぶことが重要です。

アポロビューティークリニックでは、院長・鬼沢正道が最新の臨床知見と解剖学的知識に基づき、お一人おひとりの顔の構造や組織の状態に合わせた注入治療を提供しています。

診療時間:10:00〜19:00(年中無休)
アクセス:JR原宿駅、東京メトロ明治神宮前駅、東京メトロ北参道駅
住所:東京都渋谷区神宮前2-18-15 ワンエイスビル2F
カウンセリング:3,300円

主要参考文献
Laurent TC, Fraser JR. Hyaluronan. FASEB J. 1992
Stern R, et al. Hyaluronan fragments: An information-rich system. Eur J Cell Biol. 2006
Sundaram H, Cassuto D. Biophysical characteristics of hyaluronic acid soft-tissue fillers. J Drugs Dermatol. 2013
Goldberg DJ, et al. Histologic and ultrastructural analysis of HA filler. Dermatol Surg. 2006
Beasley KL, et al. Hyaluronic acid fillers: a comprehensive review. Facial Plast Surg. 2009