
NEWS・BLOGニュース・ブログ
新型コロナウイルス感染症・インフルエンザ後にヒアルロン酸が腫れる?「遅発性炎症反応」を徹底解説
はじめに
「コロナにかかった後、以前に入れたヒアルロン酸の部位が腫れてきた」
「インフルエンザにかかったら、唇のヒアルロン酸が膨らんできた」
このようなご相談が、数年前から当院にも増えた印象です。
これは「ヒアルロン酸フィラーの遅発性炎症反応(Delayed Inflammatory Reaction:DIR)」と呼ばれる合併症で、コロナ禍以降に広く知られるようになりましたが、実はインフルエンザなどのウイルス感染全般で起きうる現象です。
今回は最新の国際論文をもとに、メカニズム・症状・対処法をわかりやすく解説します。
「遅発性炎症反応」とは?
ヒアルロン酸の合併症といえば、注入直後の腫れや内出血、最悪の場合は血管塞栓症による壊死などを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし遅発性炎症反応は異なります。
注入から数週間〜数年後に、ウイルス感染やワクチン接種をきっかけとして、突然注入部位が腫れるという特徴があります。発症頻度は**0.3〜4.25%**と報告されており、決してまれな事象ではありません(Munavalli et al., 2021)。
コロナだけじゃない―インフルエンザでも起きる
実はこの現象、新型コロナウイルスが登場する前から報告されていました。
2019年に発表された論文(Ledon et al.)では、インフルエンザ様疾患に罹患した後にヒアルロン酸注入部位に遅発性過敏反応が出た14症例が報告されています。注入から2〜8ヶ月後、感染症状が出てからわずか3〜5日以内に腫れが発症したとされており、複数のブランドで確認されました。
コロナ禍になってから症例報告が急増したのは、感染者数が爆発的に増えたためです。本質的には「ウイルス感染が引き起こす免疫反応」という共通のメカニズムがあります。
参考:
Ledon JA, et al. Delayed hypersensitivity reaction to hyaluronic acid dermal filler following influenza-like illness. J Cosmet Dermatol. 2019. → PMC
なぜ起きるのか?―メカニズムをわかりやすく解説
①組織の中に残るヒアルロン酸
ヒアルロン酸は時間とともに吸収されますが、架橋剤(クロスリンク)で加工されたフィラーの場合、微細な粒子が皮膚内に長期間残存します。免疫細胞はこれを「異物」として認識し、周囲に小さな炎症の芽(肉芽腫の前段階)を静かに形成しています。通常は症状がなく、気づかない状態です。
②ウイルス感染が引き金を引く
インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどに感染すると、免疫系が全身で一気に活性化されます。このときCD44というタンパク質を介してTリンパ球が活性化され、皮膚に残存するヒアルロン酸周囲の肉芽腫が刺激を受けます。
特に新型コロナウイルスの場合はさらに特殊なメカニズムも加わります。スパイクタンパク質が皮膚の細胞の「ACE2受容体」に結合することで、局所的に**TH1型の炎症カスケード(免疫反応の連鎖)**が引き起こされ、腫れや赤みが現れます。
参考:
Munavalli GG, et al. COVID-19/SARS-CoV-2 virus spike protein-related delayed inflammatory reaction to hyaluronic acid dermal fillers. Arch Dermatol Res. 2021. → PubMed
どんな症状が出る?
腫れ・浮腫→唇・ほうれい線・頬・涙袋など注入部位
発赤・熱感→炎症によるもの
圧痛・違和感→押すと痛い
しこり→まれに硬結が生じる
発症タイミングは感染・接種後12時間〜2週間以内が多く、片側だけでなく両側に対称的に出ることもあります。2023年のレビュー論文では、COVID-19感染後に16症例、ワクチン接種後に36症例が報告されており、ファイザー・モデルナ・アストラゼネカなど複数のワクチン種で確認されています。
参考:
An update and overview of the literature on late inflammatory reactions (LIRs) in soft tissue fillers after SARS-CoV-2. Eur J Plast Surg. 2023. → Springer
治療法は?
このような症状が出た場合、症状の重さに応じて対応が変わります。
軽症→経過観察・抗ヒスタミン薬
中等症→経口ステロイド内服、場合によってはヒアルロン酸溶解
重症→ヒアルロン酸溶解+ステロイド局所注射
特殊例 ACE阻害薬(リシノプリル等)※コロナ関連
**ヒアルロニダーゼ(溶解注射)**は残存するヒアルロン酸を酵素で分解する治療法で、炎症の原因そのものを取り除く根本的なアプローチです。適切に治療すれば、多くのケースで改善します。
参考:
Treatment of Delayed-onset Inflammatory Reactions to Hyaluronic Acid Filler: An Algorithmic Approach. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022. → PMC
当院での対応・施術を受ける方へ
当院ではヒアルロン酸注入の前に、遅発性炎症反応を含むリスクについて丁寧にご説明しています。
施術を受ける方へのお願い
ウイルス感染中・感染直後・ワクチン接種直後は免疫が活発に動いている時期です。コロナ・インフルエンザ問わず、感染や接種直後のヒアルロン酸注入は避けることを推奨しています。 目安としてワクチン接種後は2〜4週間程度の間隔をあけてからご相談ください。
また、過去に当院または他院でヒアルロン酸注入を受けた方が、感染後に注入部位の腫れを感じた場合は自己判断せず早めにご相談ください。もしかしたら遅発性炎症反応ではなく、血管塞栓を起こしていることがあるかもしれません。その場合は迅速かつ適切な処置が必要なので、夜間診療も行っている当院にご連絡いただけると幸いです。
まとめ
ヒアルロン酸注入後にウイルス感染・ワクチン接種をきっかけとして注入部位が腫れる現象は「遅発性炎症反応(DIR)」と呼ばれる
コロナに限らず、インフルエンザなどのウイルス感染全般で報告されている(2019年〜)
メカニズムは免疫系の活性化→残存ヒアルロン酸への炎症反応
治療はステロイドやヒアルロニダーゼが有効で、多くは改善する
感染中・感染直後の施術は避けることが予防の基本
気になる症状がある方・ヒアルロン酸注入をご検討の方は、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。
参考文献
Ledon JA, et al. Delayed hypersensitivity reaction to hyaluronic acid dermal filler following influenza-like illness. J Cosmet Dermatol. 2019. → PMC
Munavalli GG, et al. COVID-19/SARS-CoV-2 virus spike protein-related delayed inflammatory reaction to HA dermal fillers. Arch Dermatol Res. 2021. → PubMed
Munavalli GG, et al. Oral ACE inhibitors for treatment of delayed inflammatory reaction to HA fillers following COVID-19 vaccination. JAAD Case Reports. 2021. → PMC
Late inflammatory reactions in soft tissue fillers after SARS-CoV-2 infection and vaccination. Eur J Plast Surg. 2023. → Springer
Treatment of Delayed-onset Inflammatory Reactions to HA Filler: An Algorithmic Approach. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022. → PMC
Systematic Review of Post-Viral Delayed Inflammation Associated with HA Dermal Fillers. MDPI Medicine. 2025. → PMC
-
2026.04.04BLOG,施術に関してのお知らせ,施術について知るヒアルロン酸注入が顔の組織に与える効果——そのメカニズムと科学的根拠をわかりやすく解説 -
2026.04.08BLOG,施術に関してのお知らせ,施術について知る,美容医療コラムヒアルロン酸は「一度入れたらやめられない」? -
2026.04.19BLOG,施術に関してのお知らせ,施術について知る,美容医療コラム涙袋ヒアルロン酸注入の効果と安全性|20代から選ばれる理由を論文ベースで解説 -
2026.04.21BLOG,施術に関してのお知らせ,施術について知る肌育注射「ブナジュ」とは?──肌の"土台"から変える次世代コラーゲン製剤
お気軽にご相談ください








