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なぜ美容外科医は他の医師の悪口を言うのか?心理学的視点から考える
美容医療を検討されている方なら、SNS上で一度はこんな場面に出くわしたことがあるのではないでしょうか。
「あのクリニックの二重術は下手だ、邪道だ、当院ではもっと上手くやれる」「あの医師のやり方は古い」「あそこで施術を受けた患者さんの修正を何件もやっている」——SNSや口コミサイト、あるいはカウンセリングの場で、他院や他の医師を名指し・あるいは匂わせで批判する発言を目にする機会は少なくありません。
このような「美容外科医同士での蔑み合い」にうんざりしている患者さんの声を多く耳に寄せます。患者さんの立場からすれば、「どの情報が正しいのか」「どの医師を信頼すればいいのか」と混乱してしまうのは当然のことです。
今回は、美容外科医が同業医師の批判・揚げ足取りしてしまう背景を、心理学的エビデンスも交えながら解説します。これを知ることで情報の受け取り方が変わり、より冷静にクリニック選びができるようになることを期待しています。
【競争が激化した市場における「社会的比較」】
美容医療業界は、過去10年で急速に競争が激化しました。厚生労働省の調査でも美容クリニックの数は右肩上がりで増加しており、都市部では同エリアに複数のクリニックが乱立している状況です。
このような競争環境で人が陥りやすい心理として、社会心理学者のレオン・フェスティンガーが1954年に提唱した**「社会的比較理論(Social Comparison Theory)」**があります。
この理論によれば、人は自分の能力や意見の正しさを評価するとき、客観的な基準がない場合に他者と比較して判断しようとします。美容医療のような「腕の良さ」が数値化しにくい分野では、この傾向が特に強く出ます。
さらに注目すべきなのが、**下方比較(Downward Social Comparison)**という概念です。自分より劣っていると感じる相手と比較することで、自己評価を高め、不安を和らげる心理的メカニズムです。つまり、他の医師を批判することは、自分の優位性を確認するための無意識の行為である可能性があります。
【「自己奉仕バイアス」と承認欲求】
心理学で有名な**「自己奉仕バイアス(Self-Serving Bias)」**も、この問題と深く関係しています。
自己奉仕バイアスとは、成功は自分の実力のおかげ、失敗は外部環境や他者のせいと帰属させる認知の歪みです。例えば、「あのクリニックのやり方が悪いから患者さんが不満を持った。自分ならそんなことはしない」という思考は、まさにこのバイアスの典型例です。
SNS全盛の現代では、**承認欲求(Need for Approval)**も大きな駆動力になっています。フォロワー数や「いいね」の数が可視化されるSNSでは、より過激で目を引くコンテンツの方がエンゲージメントを得やすい傾向があります。「他院の失敗事例」や「修正症例」は、フォロワーの関心を引きやすく、結果として投稿する動機が強まります。
スタンフォード大学の研究者らが行った研究では、オンラインでの批判的・対立的な投稿はニュートラルな投稿に比べてエンゲージメントが約2倍高いことが示されています。医師も人間である以上、この「注目を集めやすい」という強化学習から逃れるのは容易ではありません。
【「インポスター症候群」と防衛的攻撃性】
美容外科医の中には、高い技術を持ちながらも、自分の能力に自信が持てない**「インポスター症候群(Impostor Syndrome)」**を抱えている方もいます。
インポスター症候群とは、客観的な成功や実績があるにもかかわらず、「自分は本物ではない」「いつかメッキが剥がれるのではないか」という不安を抱える心理状態です。1978年に心理学者のポーリン・クランスとスザンヌ・アイムスが初めて報告し、その後の研究では高学歴・高収入の専門職に多く見られることが示されています。
この不安が高まると、人は時に**防衛的攻撃(Defensive Aggression)**という形で他者を攻撃することがあります。「あの医師より自分の方が上だ」と繰り返し主張することで、自分の不安を打ち消そうとするのです。批判の激しさが、その人自身の内的不安の大きさを映し出していることもあります。
【「内集団バイアス」と流派の対立】
美容外科の世界には、骨切り・脂肪吸引などのダウンタイムが長い手術や、二重埋没手術などダウンタイムも短く日帰りでできるお手軽な手術など、実に様々な術式があり、医師によって得意な手技や考え方が異なります。こうした「流派」の違いが、批判合戦を生む温床になることもあります。
社会心理学の**「内集団バイアス(In-Group Bias)」**によれば、人は自分が属するグループ(内集団)を贔屓し、他のグループ(外集団)を過小評価する傾向があります。「自分のやり方が正しく、他のやり方は間違っている」という思考は、技術的優劣の話というよりも、この集団心理から来ていることが少なくありません。
特定の術式を強く信奉する医師が、異なる術式を用いる医師を批判するとき、そこには純粋な医学的議論以上に、アイデンティティの防衛が働いている場合があります。
【「ダニング=クルーガー効果」の罠】
非常に有名な心理学的現象として、**「ダニング=クルーガー効果(Dunning-Kruger Effect)」**があります。
コーネル大学の心理学者デイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが1999年に発表した研究で、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価し、他者の能力を正しく評価できない傾向があることを示しました。
逆に、真に高い技術を持つ医師ほど、自分の知識や技術の限界を深く理解しているため、他者を単純に批判することへの慎重さを持っています。経験を積んだ名医が「あの先生も良い手術をされていますね」と同業者を尊重できるのは、本当の意味での自信と余裕があるからです。
声高に他者を批判する行為は、ときに自分の見識の狭さを露呈するリスクをはらんでいます。
【信頼できる情報を読み解く目を持つために】
以上の心理学的背景を踏まえると、他の医師を激しく批判している医師の発言に対して、以下のような見方ができるようになります。
チェックポイント
批判の内容が具体的か、感情的か:「この術式には○○というリスクがある」という技術的な説明ではなく、「あそこはダメだ」「信じられない」という感情的な言葉が多い場合は要注意
自院・自分への言及と他院批判のバランス:他院批判の比率が高いコンテンツは、マーケティング戦略として批判を利用している可能性がある
修正症例の見せ方をどのようにしているか:「ビフォーアフター」として他院の失敗を強調することは、必ずしも自院の技術力を証明しない
批判が特定の院・医師に集中していないか:特定のターゲットへの執拗な批判は、競合排除目的である可能性が高い
美容医療を検討されている方は、クリニック選びの際にぜひこの記事を参考にしていただき、医師の発言の背景にある心理も読み解きながら、冷静に判断していただければと思います。
まとめ
競争激化により「社会的比較」「下方比較」が起こりやすい環境がある
「自己奉仕バイアス」と承認欲求がSNS上での批判行動を強化する
「インポスター症候群」に起因する防衛的攻撃が批判につながることがある
「内集団バイアス」により術式の流派対立が批判合戦になる
「ダニング=クルーガー効果」により、能力の低い者ほど他者を批判しやすい
本当に優れた医師は、他者を尊重しながら自己研鑽に集中できる
美容医療は、信頼できる医師との出会いが何より大切です。アポロビューティークリニックは、患者さんの不安に寄り添い、誠実にお答えし続けるクリニックであり続けます。
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