
NEWS・BLOGニュース・ブログ
SNSで広がるマンジャロの不正利用問題——何が危険で、どう対処すべきか
はじめに
「打つだけで痩せる」「食欲が消える魔法の注射」——そんなフレーズがX(旧Twitter)やInstagramのタイムラインに流れてきたことはないでしょうか。その正体の多くが、糖尿病治療薬として承認された「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」です。
2023年ごろから日本国内でも急速に広まり、今やSNS上では処方箋なしの個人輸入品の売買、自己注射を勧める投稿、さらにはオンラインで薬を「融通」する闇ルートまで存在します。医療機関では正規に使われる一方で、管理されない場での乱用が深刻な問題となっています。
マンジャロとは何か
マンジャロは、アメリカの製薬大手イーライリリー社が開発した注射製剤です。GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)という2種類のホルモン受容体に作用する「デュアルアゴニスト」で、血糖値のコントロールと食欲抑制の両方に働きかけます。
日本では2023年に2型糖尿病の治療薬として承認されました。臨床試験では体重を平均15〜20%減らす効果が報告されており、その高い減量効果がSNSで話題になったのです。同じGLP-1受容体作動薬であるオゼンピック(セマグルチド)が欧米の「セレブ御用達ダイエット薬」として注目を集めたことも、日本でのマンジャロブームに火をつけました。
SNSで何が起きているのか
個人間売買・無許可転売
問題の核心は、処方薬であるマンジャロが医師の処方なしに流通している点です。Xでは「マンジャロ 譲ります」「余ったので売ります」といった投稿が後を絶ちません。糖尿病患者が処方された薬を転売したり、個人輸入した未承認品を販売したりするケースが多く見られます。
日本の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では、処方薬の無許可販売は禁止されています。違反した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。それでも匿名性の高いSNSやフリマアプリでの取引は後を絶たない現状があります。
インフルエンサーによる不適切な宣伝
一部のインフルエンサーやYouTuberが「医師監修なし」「自己判断で使ってみた」という形でマンジャロの使用体験を発信し、万単位のいいねを集めています。副作用や適応外使用のリスクについての説明は乏しく、「痩せた」という結果だけが切り取られて拡散されます。
こうした投稿が若い女性を中心に影響を与え、「ダイエットのために打ちたい」という需要を生み出しています。
海外からの個人輸入
日本未承認の用量や、品質管理が不明な海外製品を個人輸入するケースも増えています。個人輸入自体は一定条件下で合法ですが、偽造品や保存状態の悪い製品が混在するリスクがあり、効果がないどころか有害成分が含まれている可能性もあります。
何が危険なのか
深刻な副作用リスク
マンジャロは強力な薬です。主な副作用として、重篤な消化器症状(嘔吐・下痢・膵炎)、低血糖、甲状腺腫瘍のリスクが報告されています。糖尿病がない人が使用した場合の安全性データは限られており、医師の管理なしに自己判断で使うことは非常に危険です。
特に、インスリンを併用している糖尿病患者に処方された薬を健康な人が使用すると、低血糖発作を起こし、最悪の場合意識を失うリスクがあります。
本来必要な患者への供給不足
マンジャロの需要がダイエット目的で急増した結果、本来この薬を必要とする2型糖尿病患者への供給が不足するという事態が起きています。欧米ではすでにこの問題が深刻化しており、日本でも同様の懸念が高まっています。自分のために薬を使いたい気持ちはわかりますが、その影響が命に関わる患者に及ぶという社会的側面も忘れてはなりません。
心理的依存と摂食障害
食欲を強制的に抑制する薬を長期間使用した場合、薬をやめた後のリバウンドや、食への強い恐怖心・罪悪感につながるリスクがあります。もともと摂食障害の傾向がある人が無管理で使用すれば、病状を悪化させる可能性があります。
SNSという虚業の中で生まれる問題
そもそも、マンジャロは「医薬品」であり、医師の診察のもと処方が必要です。
このような医薬品を影響力の大きい様々なインフルエンサー起用して発信するという構造自体が問題だと考えます。なぜならば、責任の所在がよくわからなくなるからです。
リスクや法律の観点もよくわかっていない情報弱者に対して耳障りの良い言葉を並べ、皆がよく知っているインフルエンサーを矢面に立たせ、いざ問題が起こったら、その企業側はだんまりを決め込む。一体誰が責任を取るのでしょうか?
先日も某インフルエンサーがSNS上で謝罪している姿が拡散されていましたが、果たしてそのインフルエンサーにどれほどの問題があるのか、私は懐疑的です。
様々なリスクに対して、果たしてそのインフルエンザーだけに責任があるのでしょうか。私には、その責任や法的リスクを起用した側が押し付けているようにしか見えません。
私が考える解決策
1. プラットフォームの対策強化
XやInstagramなどのSNSプラットフォームには、処方薬の不正売買を検出・削除するアルゴリズムの整備が求められます。すでに一部のプラットフォームでは医薬品の無許可販売を禁止するポリシーを設けていますが、言語や隠語を巧みに使った投稿への対応は追いついていません。
2. 薬機法の実効性ある運用
規制当局(厚生労働省・都道府県)は、SNS上の違法薬品売買への取締りを強化する必要があります。匿名アカウントへの対処は難しいですが、決済サービスや物流との連携によってトレースできるケースも増えています。
3. 正しい情報発信の拡充
医療機関や医師が積極的にSNSで正確な情報を発信することが重要です。「マンジャロは危険」という単純な否定ではなく、「適切な管理下で使えば有効な薬であり、乱用は危険」というバランスのある情報が必要です。
4. 受診のハードルを下げる
「ダイエットしたいが病院に行きにくい」という心理的ハードルを下げることも解決策のひとつです。オンライン診療の活用や、肥満症・生活習慣病に特化したクリニックへの相談窓口を広めることで、正規のルートで安全に治療を受けられる環境を整えることが大切です。
おわりに
マンジャロは、適切に使えば患者の生活を大きく改善する可能性を持つ薬です。しかし、SNSで広まる「手軽な痩せ薬」というイメージは、薬本来のリスクを覆い隠してしまっています。
「痩せたい」という気持ち自体は自然なことです。しかし、その手段として管理されない薬を使うことは、自分の健康だけでなく、本当にその薬を必要としている人たちにも影響を及ぼします。ダイエットや体重管理について真剣に考えているなら、まずは医療の専門家に相談することを強くおすすめします。
⚠️この記事は医療情報の提供を目的としており、特定の薬の使用を推奨・否定するものではありません。薬の使用については必ず医師にご相談ください。
お気軽にご相談ください












